HDDに対する補償金の危機

Uジローさんのブログで書かれていたので知りましたが、JASRAC他なんたら協会やら連盟やらが下記のような意見書を出したみたいです。


「iPodからも金を取れ」――私的録音補償金で権利者団体が意見書 (1/2) - ITmedia LifeStyle

「HDDプレーヤーなども制度の対象にすべき。PC内蔵のHDDや外付けHDD、データ用CD-R/RWなどこれまで汎用機器とされてきた製品も対象に含めるべき」「政令による指定となっている現行制度を改正すべき」


まず、「私的録音・録画補償金制度」(以下補償金制度)っていう存在がよく分かりません。それはおいといても、iPodなんかのHDDプレイヤーが対象に含まれるのは分かりますが、HDDを対象にするのは横暴な感じです。しかし、補償金制度が良く分からない状態ではこの議論もよく分かりませんので、調べてみましょう。


私的録音・録画補償金制度 JASRAC
補償金そのものはMDなどのメディア1枚ごとに数円ずつ、または録音機器などのハードごとに1%〜3%、メーカー側などで集めているようです。そして、それを私的録音補償金管理協会(sarah)っていう団体が著作権者に分配しているんですね。と、仕組みはわかったんですが、その設立意図はなんなのでしょう?


どうして僕たちは補償金を支払わなければならないのか。


著作権法第30条の2では

私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器であって政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

補償金を支払わなければならないと書いていますが、理由は?


意見書の中ではこう指摘しています。

著作権法第1条「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。」に反している。


WIPO著作権条約第10条及びWIPO実演・レコード条約第16条(2)で権利制限が許容される「著作物(実演、レコード)の通常の利用を妨げず、かつ、著作者(実演家、レコード製作者)の正当な利益を不当に害しない特別な場合」を既に超えている。


私的録音に対して相当な額の補償金が支払わなければ著作者の正当な利益が不当に害される。ということらしいのですが、著作者の正当な利益とはなんなのか?


音楽の入手方法は大体下の3つでしょうか。

  1. CDを買ってくる
  2. CDを借りてくる
  3. オンラインで購入


私的録音(複製と同じだよね)ってのは上記の方法で入手した音楽を自分(または家庭に準ずる範囲)で聞くためにMDなどのデジタルメディアにコピーすることですよね。そして、デジタルコピーによって著作者の利益が害されるという。しかし、CDを買うにしろ借りるにしろ、オンラインで買うにしろそこで支払われる代金の一部は当然著作者に支払われているはず。その代金が著作者の正当な利益なんじゃないでしょうか?


それとも正当な利益=購入された場合の利益で、それを害されるというのはレンタルによるデジタルコピーが非常に多いということなのでしょうか?CDを安くレンタルしてきてデジタルコピーされているから本来なら購入されるはずのCDの売り上げが減っている。そのため著作者に入るべき利益が減っている。そういった理由かな。


それを危惧してレンタルの金額を上げることができなかったのは、やはりコピーする気がない人との不平等さからなんでしょう。しかし、現行の補償金制度でも不平等さは残っています。録音機能がついている機器に対して、録音機能を使う気のない消費者も知らないうちに補償金を払わなければいけないのは不公平ですよね。まぁ、業務用など大部分が音楽の保存メディアとしては使われないだろう汎用のHDDが対象になるほうがありえないですけど。




ふぅ。補償金制度ができた当時は一体どういう議論をしたんでしょうね。その中身はさっぱりわかりませんが、今回も同じような話になるんじゃないでしょうか。


文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第3回)議事録[資料2−2]資料4号
でイタリアとドイツだけがリストアップされているすべての機器を補償対象にしているのはなんか理由があるのか。。。