タッチタイピングと記憶モデル

認知心理学の授業で扱った内容についてレポートを書けという課題が出ていたので,記憶モデルとタイピングについてざざざと書いてみた.時間があれば10ページ分くらい書きたかったが,明日のゼミの準備もあったので2ページに収める.

んまぁ,別に大したことは書いてないんだけど前から気になっていた「タイピングソフトが出力する打鍵速度の一般性」に影響を与えると思われる概念が出てきたのでそれについてまとめてみたという話.

活性化拡散モデルにもとづく意味的ネットワーク

人の記憶モデルに関する一つのモデルに活性化拡散モデルというものがある.これは以下のような関連する記憶同士のネットワークが脳内に形成されているというもの.

活性化拡散は例えば「車」という単語を見たり聞いたりすると,それに関連する(ネットワークにつながれた)「トラック」や「バス」「消防車」といった単語を活性化させて想起させやすくすることを指す.

これは簡単な実験で実証することができて,例えば「次のような単語はあるか?Yes/Noで答えよ」というような質問をして画面に一つずつ単語を出した時に,それに反応する時間を調べれば良い.実際に,関連する単語が出てくると反応時間が早くなるらしい.


(早い)
トラック
(遅い)

(遅い)
消取
(遅い)
バス

といった感じになるはず.
これをタイピングに適用すると下のようになる.

ここで「単語」と「ローマ字」と「指の動作」を関連付けているのは,タッチタイピングの習熟度合によって「単語」と「ローマ字」の関係の方が強かったり,「単語」と「指の動作」の関係の方が強かったりする場合があると考えられるから.ここではあんま関係ないけど,習熟が進むと指の動作との関連付けの方が強くなると思われる.

上の図から,例えば「車」が画面に出てきてそれを認識すると,活性化拡散モデルから「トラック」「バス」の単語が活性化され,それぞれに関連付けられた「ローマ字」や「指の動作」の記憶も活性化されると考えられる.

ここまで来るともうわかると思うが,関連するワードが連続で来るとより速くタイピングができて,関係ないワードがバラバラにやってくるとより遅くなるという仮説.ほとんどのタイピングソフトはランダムにワードを出現させるので実質的にはあまり関係ない話なんだけど,どれくらいの影響が出るのかは試してみたい.

タイピングソフトが出力する打鍵速度の一般性

タイピングソフトにはいろんな特徴があるのでここでは全然まとまらない話なんだけど,例えば実際的な文章を作成するタイピングを基準とした時にあるタイピングソフト(例えばタイプウェル)が出力する打鍵速度ってどれくらい信頼できるんだろうという話.

あるソフトの打鍵速度と別のソフトの打鍵速度の関係も気になるが,実際にはこのソフトでこれくらいの速度であれば別のソフトでこれくらいという指標はあまり役に立たない.例えばタイパー同士であればタイプウェルの秒数でも聞けば速度はほとんど分かるし,プレイしたことがない人でもたかだか1分足らずで評価を得ることができるからだ.

タイピングソフトが持つ特徴について,それぞれどの程度影響を与えるかを調べ,それを統合することができれば各タイピングソフトの打鍵速度が持つ特徴を知ることができるはず.上の項目で上げた意味的ネットワークの話はその一例.

まだまだ上手くまとめられないのでまた今度.