方向性だけ決められても・・・ねぇ

「違法サイト」からの動画・音楽のダウンロードが違法とされる方向が、私的録音録画小委員会で固まった。違法化への反対意見も踏まえながら、ユーザーが大きく不利益をこうむらない形で制度設計するとしている。

私的録音録画小委員会:「ダウンロード違法化」不可避に - ITmedia ニュース

文化審議会の意見や送られたパブコメはここで見れる。
16.著作権分科会 私的録音録画小委員会の第14回
文化審議会:文部科学省
私的録音録画小委員会中間整理に関する意見募集の結果について(PDF)

初めのほうは私的録音に関する補償金の話で、8ページ目から違法サイトからの私的録音録画に関するコメント。もちろんJASRACからのコメントもある。

今回問題なのはこれまで認められてきた「ダウンロード」という行為が認められなくなる可能性があるからである。著作権法では基本的に他人の著作物を勝手にコピーすることを認めていない。買ってきたCDをコピーして他人に配布されたりすると困るからだ。しかし、三十条で例外的に家庭内などの私的な範囲であれば認めている*1。なぜかと言えば個人的な範囲であれば販売数などへの影響もないし、過度の制限は文化の発展に良い影響を与えないからである。このおかげで他人の著作物である音楽CDをパソコンにコピーすることができるのである。

インターネットからのダウンロード*2も同様に個人で楽しむだけであり、私的使用の範囲として認められてきたのだが、今回それが覆る方向性に決まったというのでみんな慌てているのだ。委員会では「ユーザが違法サイトからのダウンロードであることを認識している場合」に限りその「ダウンロード」行為は私的使用の適用範囲から外れるとしている。

違法サイトとはすなわち著作権者(アーティストなど)の許可を得ずに音楽CDのデータなどをアップロードしているサイトのことであり、違法であると分かっていて「ダウンロード」したときに限ると言っているがここが問題。ユーザはそもそも許可を得ているか得ていないかなんて知ることはできないし、「ダウンロード」しなければ中身がわからないのにその物が他人の著作物かどうかを知ることは不可能なのである。

ここまでの話はだいぶ前に違法化の話題が出たときにみんなから言われていたこと。しかし、今回の文化審議会のコメントを見ても納得できる展開に進んだとは思えない。詳しくは今回の会議の意見がまとめられてからだろうが、記事を読んだ限りでは「なんか反対意見は多かったけどとりあえず方向性として違法化に進めることにしました」という感じだ。依然として「ダウンロード」の定義は曖昧なままだし、違法サイトの識別をユーザが容易にできるようにするための枠組みのイメージもわからない。

一番わからないのは、以前から違法だったアップロード行為が現在でも至る所で行われているのにも関わらず、ここで法整備を進めたって何の意味もないのは明白なのにこんなことになっているということ。元凶が断てなければこんなことしたってとかげのしっぽ切りにしか(にすら)ならないだろう。

あれ?一言書くだけのつもりだったのになぜか長くなってる。
ダウンロード違法化に関する自分のまとめ。


@追記
もう少し詳しい記事が出てきた。

今回の議論はダウンロードのみ「複製」とみなし、ストリーミングサービスは対象外。(中略)文化庁は「キャッシュの扱いについて議論した著作権分科会の今年1月の報告書などを踏まえ、必要に応じて法改正すれば問題ないのでは」

コンピュータを使うときに何が「複製」なのかは難しい。

P2Pファイル交換ソフトの利用していた人が利用をやめた理由について、26.4%が「著作権侵害を避けるため」と答えた

続けている人の理由はなんでしょう?
私的録音録画小委員会:反対意見多数でも「ダウンロード違法化」のなぜ (1/2) - ITmedia ニュース

利用者保護に十分配慮するとした。具体的には,刑事罰を付けない,法の執行は,違法複製物であると知ったうえで利用した場合に限るといった留保条件のほか,政府や権利者による法改正内容の周知徹底,権利者が許諾したサイトの情報提供,警告・執行の手順に関する周知徹底,相談窓口の設置,適法マークの推進といった項目を折り込む方針

これに刑事罰が付くとさらにまったく別の話になってくる。
「ダウンロード違法化」がほぼ確定,録音録画に加えソフトウエアも対象に,私的録音録画小委員会で文化庁が方針を示す - 産業動向 - Tech-On!

*1:私的使用(≠利用)

*2:Webページ閲覧は画像やテキストのダウンロードである