「キーボード配列QWERTYの謎」読了

技術系の本と思わせておいて経営関係の本?

キーボード配列QWERTYの謎

キーボード配列QWERTYの謎


当たり前ですが頻出するカタカナの人名と会社名に閉口させられつつも,読んでいくうちにどんどん引き込まれていきました.キーボード配列の本と聞いてもっと細かい技術的な話が出てくるんだろうなと思っていましたが,出てくるのは「特許」「特許」とかなり企業戦略的な話が多かったですね.中盤以降は特にタイプライターの販売を通していかに儲けるか,会社を大きくするかという話で,その過程でQwertyという配列が完成に向かったということがよく分かりました.

「...そこで、アームの衝突を防ぐために、タイピストがなるべく打ちにくいようなキー配列をデザインしたんだ。それがQWERTY配列だよ」

といういわゆるQwertyに関する誤った主張を否定する立場の本と聞いていたので,「×打ちにくい ○打ちやすい」という主張なのかと思わせておいて,実は打ちやすさはポイントではなく,そもそも効率だけを考えて配列が作られたわけではないという(僕にとっては)搦め手からの主張に,なるほどなるほどと首肯するしかありませんでした.

キーボード配列を普及させるためにはタイプライターが売れないと駄目,効率よく売って会社を大きくするにはほかの企業と差別化できる特許が大事.Qwertyについて考えるときにこういった視点がほとんど無かったので目から鱗でしたね.

また,タイプライターを作る人の苦労がひしひしと伝わってきて,手軽にソフトエミュレータで配列を切り替えられる今のシステムのありがたさが身にしみました.もう頭が下がりっぱなしです.

そして,今はソフトエミュレータを使えば(一部の人にとっては)手軽にいろんな配列を試すことができますが,新しい方式を広く使ってもらうためには結局ハードを作って売ってシェアを広げて行かなきゃいかないわけで,そういう意味では彼らと同じだけの苦労が必要なんですよね.


最後に,カタカナ語が多い内容は横書きの方が読みやすいと思うのですが,どうなんでしょう.それと,いくつも出てくる会社の系譜は図にしたらすっきり頭に入ってきそうです.