アイデアを出すための良い切り口

アイデアのフィルタリング

「今日なに食べようか?」
と友達に聞かれたとき,あなたはどういう思考を踏んで答えを導き出しますか?すぐに食べたいもの,行きたい場所が決まる場合は何も考えずに答えが出るかもしれませんが,どこにしようかと迷う場合もあると思います.そんなとき,こんな風に考えたりしないでしょうか.

  1. 「うーん,近場だとこのお店かな」
  2. 「昨日はカレー食べたから今日は別のにしよう」
  3. 「ちょっとぐらい遠くてもいいので中華が食べたい」

こういう感じのYes/Noで答えられない曖昧な質問に答えるときは,自分の中で何かの答えを見つけ出してくる必要があるのですが,一般的に曖昧な質問に対する選択肢は多くなりがちです.上の例のように食事であれば回答に時間がかかったり,納得いく答えでなくてもそれほど困りませんが,就活の面接なんかでは頻繁に曖昧なことを聞かれて具体的なことを答える必要が出てきます.

この曖昧な質問に対する答えを見つけるときの手がかりの一つに「アイデアのフィルタリング」というのがあります.今日のタイトルにもあるように,「切り口」と言ってもいいんですが僕としてはフィルタをかけるという言葉の方が好きです.選択肢が非常に多すぎてどれから評価していけばいいのか分からないため,結果的に選択することができないという問題に対して,意図的に選択肢を狭めてやるのがフィルタリングです.

先ほどの食事の例で言うと下のようになります.

  1. 近場→地理的なフィルタリング
  2. 昨日はカレー→過去の情報でフィルタリング
  3. 中華→好みでフィルタリング

もちろん,世の中にあるすべての食事という集合から,あらかじめ「自分が知っているもの」というフィルターをかけた状態が前提にありますが,それでも多いためさらに選択肢を狭めるのが上記のフィルタです.実際にお店に行ってからでも,さらに「店員のお薦め」というフィルタがかかったりする可能性もあります.

このように曖昧な質問に対しては,その回答に意図的にフィルタをかけてやることで,膨大な選択肢から自分が望むものを選択しやすくすることができます.

フィルタとマジックナンバー7±2

さて,本題に入りますと,PC講座では受講生に創作的な活動をしてもらうことがよくあります.例えば今回の講座でも受講生にレポートを書いてもらうのですが,当然その内容は受講生自身に選択してもらわなければなりません.

しかし,いきなりテーマを与えられてさあ書けと言われてもかけるものではありません.例えば,今回は「おすすめの場所を紹介」というテーマで書いてもらうのですが,おすすめの場所と言われてすぐに思い浮かぶでしょうか.ちょっと難しいと思います.

実は,レポート講座の担当スタッフはあらかじめ「国内限定」というフィルタを用意していたのですが,どうでしょう?国内限定と言われて何か新しいイメージが浮かぶでしょうか.

初めにこの国内限定というフィルタを聞いたときに,これは意味がないのではないかと感じましたが,その明確な理由が見つからないためそのままにしてしまいました.今までの経験上,効果的ではないフィルタが存在するのは認識していましたが,なぜそのフィルタに意味がないかという理由が思い浮かばなかったのです.


なぜ,特定の場所を考えたいときに「国内限定」というフィルタに意味がないのか.それはおそらく右の図のような感じになっているからだと思います.自分の記憶の中にあるすべての場所を集合として考えると,おそらく国内にある場所というのは大部分を占めるのではないでしょうか.簡単に言ってしまえば,フィルタをかけたのに選択肢が全然狭まっていないので問題の難易度が初めの状態から変わっていないわけです.

あまり選択肢を絞り込めないのが良くないフィルタであることはわかりましたが,それではどの程度に絞り込めれば良いフィルタと言えるのでしょうか.ここで,頭に思い浮かんだのがマジックナンバー7±2というやつでして,良く耳にする人は逆にうさんくさいと思うかもしれませんが,人が短期間に記憶できる「物事」の数とかそういう感じに説明されることがあります.

ちなみに,「物事」にカギ括弧を付けているのは,同じ事象が人によっては100個分になったり1個になったりすることがあるからです.例えばプロ棋士にとっては将棋のある盤面の状態を覚えるのはたやすいかもしれませんが,一般人にとっては無理難題な話です.このとき,プロにとっては将棋の盤面が一つの「物事」(チャンクと言います)になっているわけです.しかし,一般人は駒一つ一つをチャンクとして捉えてしまうため,盤面を覆うすべての駒を記憶するなんて無理なわけです.タイパーがワードを一瞬で打てるのもこれとほとんど同じ理由ですね.

さて,短期間でイメージできるチャンクが7個ぐらいという説明をしましたが,こうなれば話は簡単で良いフィルタっていうのは集合に含まれる項目の数を7個ぐらいに絞り込めるものなんだと思うわけです.


なんて中途半端なところで終わり.ライフハックっぽいネタだなーと思ったけど,これじゃ結局どうしたらいいのかわからんw良いフィルタの出し方についても考え中.

PC講座的おまけ

とはいえ,例えば映画に登場する場所を紹介しようといった切り口にしてしまうと映画を見ていない受講生にとっては選択肢ゼロという状況になりかねません.こちらから与えるフィルタはできるだけおおざっぱなものである必要があるのですが,ほとんど場所を限定できないようなフィルタでは,逆に海外のことを紹介したい受講生のアイデアを台無しにしてしまう可能性もあります.

結局,細かいサポートは受講生単位にしていくしかないわけですが,それをすべてグループアドバイザに任せるのではなく,ネタ帳なんかのアイテムをあらかじめ用意しておくのがコンテンツ担当の役割なのです.