レッツ速読〜読書を科学する〜

今まで速読のこと全然知らなかったので本を読んでみました。
すごい速読術 ひと月に50冊本を読む方法 (ソフトバンク文庫NF)
絶妙な「速読」の技術―この本を読むだけで速読脳開発のトレーニングができる「例の方法」 (アスカビジネス)
速読はこんな人にお勧め。

  • 本をたくさん読んで知識を身につけたい
  • 書類を素早く整理して余裕のある生活を送りたい
  • たくさんのエロゲ(ノベルゲー)を手早くこなしたい

速読の誤解

ちょっと前にぽぷさん悠木さんが速読について話題にしてたのを見かけるまで、速読ってのは変態的な特殊能力で僕みたいな一般人には何の関係も無いことだと思ってました。いや、まじで。
そのきっかけはおそらく10年ほど前にテレビで見た「速読」で、小学生くらいの子が本を一冊ぱらぱらぱらっと数秒でめくって、それを何回か繰り返して「覚えました」って言ってたのが印象的でした。

が、二冊の本を読んで速読にはいくつかの種類があり、ある種の速読は常軌を逸した変態的な天賦の才でもなんでもなく、訓練によって身につけられるものであるということがわかったのでここにまとめます。

速読の種類

『絶妙な速読』でも書いていますが、一般的に速読と言ったときにそれが指すものはかなり曖昧で、結果的にその手法に対する理解もあやふやになってしまいます。二冊の本ではどちらもほぼ同じく以下の三つについて言及していました。

拾い読み、とばし読み、スキャニング、スキミング

すべての文字に着目せず、目的としている文章や気になる内容を探す方法で、新聞や雑誌の見出しだけを見て、読みたい文章を探すのがこれです。「探す」ためにはあらかじめターゲットを自分の中で明確にする必要があるため、小説などでは使えません。『すごい速読術』では特に高速な速読はこちらに分類されているようでした。

1ページをイメージとして掴む、右脳で読む

この手法が昔テレビで見た衝撃的な「速読」だったのかもしれませんが、どちらの本にもこの方法自体に関する説明は載ってなかったので詳しくはわかりませんが、おそらく本を読んで一人で練習するには向かない方法なのでしょう。ちなみに、勝間さんは「10倍アップ勉強法」の中で速読スクールに通ってフォトリーディングを身につけたと書いていましたが、おそらくこの方法なのでしょう。ググってみると確かにかなりのサイトがヒットするのでそのうちこの方法についても調べてみようと思います。

単純に短時間あたりに読む文字数を増やす

上記の方法は韓国のキムさんが提案したもので、それに対してアメリカ式と呼ばれるのがこちらです。すごくシンプルでわかりやすいですが、この方法の何が嬉しいかというと読書という行為を科学的に分析して*1、それに基づいてどう訓練すれば速く読めるようになるかがはっきりしていることです。少なくとも本を「1ページずつイメージとして掴むんだ」と言われるよりは、「人はこうやって本を読んでいるから、ここを訓練すれば良い」と言われた方がすぐに行動できます。

読書の基本

どちらの本でもアメリカ式という形で紹介している速読法の基本となるのが読書するときの視線の移動です。文章を読むとき人は一文字ずつ視線の中心に持ってきているわけではなく、あるブロックを見て次のブロックに移動するそうです。そのとき、視線の移動は次の四つに分類することができます。

  • 停留:視線を止めて数文字のブロックを認識する
  • 飛越運動:次のブロックに移動する
  • 行間運動:次の行の頭に移動する
  • 逆行運動:理解できないまま進んでしまったため後ろに戻る


ちなみに上図では三つにわけてありますが、右側が読書に慣れている人で左に行くにつれて読書の苦手な人の視線移動パターンになっています。実際、疲れているときに本を読もうとして逆行運動が頻発してしまうことなんかは体験してることと思います。

ここまでは読書における視覚に依存する部分です。『絶妙な速読』では読書という行為を階層的な以下の三つの能力の組み合わせであると紹介しています。三つ目は僕が付け足したものです。

  • 「視覚」による映像の取得
  • 「文字」の認識
  • (文の構造の理解)
  • 「文」の意味を理解

速読をするためにいろんな方法が提案されていますが、例えば文字を素早く正確に認識するためには漢字の語彙が必要であるし、文の構造を掴むにはあらかじめたくさんの読書経験が必要でしょう。文の意味を理解するには事前にその分野に関する知識があった方がいいかもしれません。そういう意味で速読とはこれらの各階層に対応した訓練の総合的な産物であると言えます。

速読の基本

読書のメカニズムが理解できたら後はそれをどう改善するかですが、特にここでは視線の移動に関する点について紹介したいと思います。先ほどの話で普通にわかったと思いますが、読書をするときに停留するポイントが多ければ多いほど、逆行運動が発生すれば発生するほど遅くなってしまいます。
そのため、停留と逆行運動を減らし、飛越・行間運動を素早く行うことで速く読むことができます。
……と言われても困るかもしれませんが、実際やってみるとわかる通り(一般的に速読といったこれくらいの)2000字/分という速度で正確に行をなぞっていく(飛越・行間運動を行う)のはなかなか大変なことで、1行飛ばしてしまったり途中でずれてしまったりといったことが起こります。細かい練習法は本に載っているので買ってみてもいいし、普段読むときに意識するのでもいいと思います。

もう一つの停留ポイントを減らす方法ですが、こちらも一回に見つめるブロック内の文字数を増やすことで対応できます。『すごい速読術』では最大で1ページをブロックに収めるような訓練を紹介していますが、ぶっちゃけ1ページを一目で見てすべての文字を認識するのは不可能です。最初にこの本を読んだときにそれは変じゃないかと思ったら『絶妙な速読』の方で次のように書いてありました。

認知スパンは、解剖学的には、目の網膜の黄斑部に対応しており、明視距離で左右に6cm、上下に5cm弱ぐらいの範囲とされています。(中略)日本語の一般の本では、縦書きの行の長さが、14〜15cmほどあり(中略)、1ページを一目で読むというトレーニングは解剖学的に無理があります。

とは言ってもおそらく大部分の人が認知スパン(一目で見れる文字のかたまり)を解剖学的な限界まで利用できていません。おそらく僕も速読を意識するまでは一度に3文字程度しか見ていなかったと思います。
なので、まずこれを意識することで停留ポイントを減らすことが大事です。縦書きの文庫であればおそらく1行の中に停留ポイントを二つ設定すれば行の半分ずつ文字を認識することはできるはずなので、行の上から見て4分の1の点と4分の3にある点を意識して読むようにすると良いでしょう。

また、「頭の中で声を出さずに読むだけで速くなる」というのをよく見かけますが、初めにこれだけを意識して速読を練習するのは僕には難しいように思えました。なにしろ、文字を見ていると自動的に頭の中で読んでしまうため、ゆっくり眺めてるとどうしようもなく黙読してしまってストレスがたまるばかりです。速読本を読んだ後に停留ポイントを減らし、速やかに視線を移動することを心がけた結果、すんなりと読まずに進んでいけるようになった気がします。つまり、因果関係が逆で内語*2を発しないことが速読の要因になるのではなく、速く読もうとした結果として内語を発しなくなるという方が正しいのではないかと思うわけです。

これで現状1300〜1500字/分程度で読めてるはずです。ぶっちゃけこの方法で5000字とか10000字いけるかはわかりませんが、おそらく2000字ぐらいはいけるんじゃないでしょうか。まぁ、結局はたくさん本を読んで訓練するしかないわけです。頑張りませう。

個人的にはこの方法だと縦書きの方がやりやすいです。紹介してた本がどちらも縦書きだったかもしれませんが…。

参考までに速読術を学ばずに本を素早く読む6つの方法

P.S.
5000字/分を超えるというW/Hさんの速読法を知りたいっす。

おまけ

次のエントリにも書いてるけど、速読という短時間で大量の情報を取得するという行為はもっと一般化して考えてもいいと思います。楽譜を速く読むでも、タイピングゲームでワードを同時に大量に認識するでも、シューティングゲームの弾幕を認識するでもいいんですけど、そういった能力を総合的に上げられる可能性があるんじゃないでしょうか。それとも、視覚能力の向上だけを図っても、やはりその上に載っている知識*3が無ければ無理な話なのか。気になります。

*1:と書くと急にうさんくさく感じるw

*2:頭の中で文字を読むこと

*3:曲のパターンとかよくある弾幕の軌道とか