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妖精さんの多様性

感想

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)


いつも通りほわほわと楽しめるお話でしたが、なんだか今回はいつもおっちょこちょいの「わたし」が知的な風な会話をしている場面がちょっぴり多かったような気がします。まぁ「風」であってそれらの会話にほとんど意味はないのですが、そこがいいのです。


二話構成でページはちょうど半分ずつ。この巻では全体を通して妖精さんの形質の継承やその多様性について多分に語っているように感じました。
前半で「わたし」がある妖精さんに対して「なかた氏の子孫ではないか」と考えていましたが、これは妖精さんが得体の知れない方法で増殖するにしても、無から生まれるのではなく元になった妖精さんからその形質を受け継いでいる可能性が高いことを示唆しています。後半の頭でも「氏族化」という言葉でおじいさんが語っています。

さてさて、それを踏まえて後半の「国造り」を読んでみるとちょっと気になることがあります。これまであらゆる場面でその万能っぷりを発揮してきた妖精さんですが、湖上の島では何度も何度も「こんなんじゃダメだ」と自分たちの仕事ぶりを唾棄しています。実際、たくさんの妖精さんが集まった場面では常に超科学を発展させてきたのに「いつまでも建造物に木材を使っている」「木がなくなって困っている」「土壌の養分がなくなって困っている」とちょっと今回は不甲斐ない様子です。

そして、その原因こそが序盤に語られた氏族化、多様性の欠如によるものではないかと考えました。ここは完全に推測ですが、妖精さんの持つ能力に偏りがあると仮定し、その能力が増殖時に受け継がれるとすれば、たった数名から8000人まで増殖しても能力の多様性を得ることはできません。そもそも、その数名ですら元来お気楽な種族なのに全員が鬱になってしまうような似通った妖精さんたちです。他の系統の妖精さんがいればいとも簡単に解決できるような問題を解決する能力を持っていないがための国家崩壊シナリオだったのではないでしょうか。

広い荒野においてはいろいろな場所からやってきた様々な系統の妖精さんが存在し、各自が様々な能力を発揮できるため、結果として「妖精さん」という種族は何でもできるというイメージですが、単体あるいはある系統の妖精さんだけ見ればその能力は限られているのではないかと思うのです。

まぁ限られた状況であれだけの能力を発揮してるので地球上で「最強」の存在であることは間違いないですね。なんだか絶望ENDのフラグっぽい感じもしたけど、あからさますぎるのできっと絶滅はしないでしょう。