民営刑務所でソフトウェア開発

運営の大半を民間企業が担当する、日本初の「民営刑務所」が山口県美祢市でオープンした。新型刑務所なだけあって、作業内容も斬新だ。ベンチャー企業が受刑者に、ソフトウェアの開発をさせるというのだ。

日本初・民営刑務所 囚人が「ソフト開発」 (1/2) : J-CASTニュース


刑務所でソフトウェア開発?!いろいろ気になるポイントがあったので少し調べてみました。美祢刑務所が日本で初めてのPFI方式の刑務所であること。はてなの人力検索でそれに関連していそうな質問が出ていること。刑務所内でプログラミング学習すること。

日本初のPFI方式の刑務所

PFI方式というのはいわゆる公共事業を民営化したものらしく、理念としては以下のようなものがあげられているようです。

  • 公共性のある事業であること。(公共性原則)
  • 民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用すること。(民間経営資源活用原則)
  • 特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されること。(透明性原則)
  • 各段階での評価決定について客観性があること

PFI概要/PFI事業の性格


国立大学が独法化してからは全国の学寮にもこの方式が導入されるようになってきていて、個人的には昔からそこそこ馴染み深い単語です。民間になったら余計に高くなるんじゃないかと心配していましたが、そんなことは無いようでPFI方式が「低廉かつ良質な公共サービス」を実現させているように思えます。


さて、今回はこの方式が刑務所に導入されたということですが、刑務所が民営化して心配になるような点は管理体制の効率化のための暴力行為とかコスト削減のための劣悪環境とかいったものでしょうか。最近「ショーシャンクの空に」といういわゆる刑務所脱走ものの映画を見ましたが、まさにそんな感じでしたね。


この映画の舞台になっているアメリカは昔から刑務所の民営化を広く行っている国ということで少し調べてみましたが、200万人もの受刑者を収容するための結果論的な印象を受けました。ざくっと下のPDFを読んでみると1980年代に一気に服役人口を増やすような法律の制定⇒服役人口増加⇒要コスト削減⇒民営刑務所増加という流れっぽいです(あってるかな?)。
CiNii 論文 -  ジェフ・ジンデン 民営刑務所の問題点 : アメリカの経験から (アンドリュー・コイル他編『刑事施設民営化と人権』の紹介(1))(PDF)


今回の場合でも受刑者が増えすぎたので民営の刑務所を作ろうという流れから言えば変わらないのですが、費用対効果をもっとも重視しなければいけない企業にとって、人を更生させるという複雑で大変な業務を問題なくこなせるのでしょうか。

これまでは、受刑者が行う労働といえば、木工・印刷・洋裁・農業など、昔ながらの技術を利用した作業が一般的だった。だが、今回オープンする刑務所では、刑務作業として、「ソフトウェア開発」も行われるというのだ。

とあるように、受刑者に労働させる主体が国から企業に変わったときに、受刑者は「被更生者」ではなく単に「労働者」として扱われてしまわないのか心配です。

人力検索で質問

プログラマーの方に質問です。 受刑者にプログラミング言語を覚えさ.. - 人力検索はてな


質問者は今回の関係者かもしれないし、そうじゃないかもしれませんが、美祢って名前も出ているので非常にそれっぽいですね。ただ、関係者だとしたらこういう(半分ネタの答えが返ってくるような)場で業務に関するような質問をするというのはなかなか勇気がありますね。


この回答をもらったあとにじっくり検討していることを祈ります。

インターネット使用禁止でプログラミング

なお、刑務所内での作業なので、いくらPCを使って作業をするとはいえども、インターネットには接続できないようになっている。

正直言ってこれは堪えられません。僕自身はもうすっかりプログラミング=インターネット環境が整っている場所でするものという意識でやっているため、ネットにつなげない場所ではほとんど(特に初めて取り組むジャンルの場合)プログラムを書く気になりません。


あらかじめドキュメントをそろえるとかプログラミング本をそろえるとか学習の進め方にはいろいろあると思いますが、やはりインターネットを活用してプログラムを書く人が多いように思えます。特に他人の書いたプログラムを参考にできるという点では圧倒的にインターネットを使ったほうが効率的です。そして、ネット上でのそういったことに関する「調べ方」というのも重要なスキルでしょう。

プログラミング技術を身につけた受刑者が出所した際は、そのまま同社の社員として採用していきたい考えだ。

とありますが、果たして望むだけの効果は得られるのでしょうか。


(追記)と思いましたが、別に好き勝手やる「趣味プログラマ」を育成するわけではないので、インターネットを使わ(え)ないというのは余計な情報の流入を防ぎ、関係ない分野への関心を向けさせないという意味でむしろ効率的なのかもしれません。



しかし、下の写真見ると今住んでる部屋とほとんど変わらないような。
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