そんなESで大丈夫か?

ブックオフで最近買いました。1冊105円也。

バカの壁 (新潮新書)

バカの壁 (新潮新書)


8年前にバカバカと売れてましたが、おかげさまで後から読むには手に入りやすくてありがたい。この本については全体を通して納得できる話・できない話が半分半分といった感じですが、今日は納得できた話の一部を抜粋。

会社でもどこでも組織に入れば徹底的に「共通了解」を求められるにもかかわらず、口では「個性を発揮しろ」と言われる。要するに「求められる個性」を発揮しろという矛盾した要求が出されているのです。

個性の話はちょうどこの前母親と飲んだ時に出てきて、気になっていたタイミングでこの本を読んだので印象に残りました。母親は今年に入ってから通信で美大に通い始めて、文学史やら美術に関するレポートを書いたり、デッサンを描いたりと大忙しらしいのですが、この前スクーリング*1で、大学のセンセイから

私は写実的な絵とか綺麗な絵は求めてない、個性的な絵が見たい

と言われたらしいのです。その話を聞いて母親に「個性的ってどういうことだと思う?」と聞いてみたところ、「四角いものを見て丸く描くとかそういう感じ」と答えが返ってきてその場はそれで終わったのですが、写実的な絵がなぜ個性的ではないのかということについていまいち納得がいきませんでした。


それに対する回答の一つが先程の「求められる個性」、言い換えると「好み」なのだと思います。僕は「個性」という言葉は「自然」*2と同じくらい欺瞞に満ちていて気持ち悪く感じるのですが、どうも便利な言葉らしくその意味を明確にしないままにみんながよく使っています。

こせい 1 [個性]
その‐人(物)に特有の性質.
三省堂 Web Dictionary

ヒトである以上、身体的にも精神的にも特有の性質だらけであって個性が存在しないわけがなく、むしろ特有の性質だらけの個体から共通の性質を見つけることが人間的であるとさえ思います。特有の性質はもともとたくさんあるのだから、逆に言えば、個性というものを取り出してこようとすると、必ず誰かの意図が介在することになります。

例えば「個性を尊重した教育」なんていう言葉がありますが、これは言い換えれば「生徒の持つ性質の中で教師が好ましいと思うものを尊重した教育」と言えるのではないでしょうか。そんなことを明確に言うことはできないので、個性なんていう言葉になるわけです。就活を目指している人を対象に言えば「会社が好ましいと思う性質を尊重する教育」になるでしょう。


少し前に妹の就活相談を受けて、これまでに受けた会社の一覧と提出したエントリーシート(ES)、自己分析シートなどを見せてもらいましたが、まあ個性的であることは間違いありません。自己アピールは完全に自分語りで採用する側へのアピールになっていなかったり、ところどころ日本語がおかしかったり、応募する会社のことを特に調べずにエントリーシートを書いていたりと、突っ込みどころ満載です。
前述のこともあって「個性的な学生を求めてます」なんて会社には僕は絶対入りたくありませんが、おそらくそういうことを標榜している会社であっても、妹を採用したいとは思わないでしょう。そこにはその会社の「求める個性」があり、それを理解してその性質を持っているとアピールできる学生が採用されるはずです。
まあ、多くの会社はこういう学生が欲しい、と求める個性をちゃんと明示しているはずなので、妹にはもう少しそこを意識してもらいたいところですけどね。そうでない会社は怪しいのでやめておきましょう。




妹に対して「日頃のアウトプットが足りないんじゃないの」などと偉そうなことをのたまっておきながら、てめーが全然アウトプットしてねーだろと自戒しつつの今日の日記でした。

*1:年に数回実際に大学に通って単位をもらうイベント

*2:自然がいっぱい、とか天然成分配合とか